クワガタムシ科(Lucanidae)についての調査記録など

目的はverificationismに基づく原典検証・情報整理・批評説明。なお非営利・完全匿名を前提としています。

†Ceruchus fuchsii Wickham,1911についての検証

Ceruchus fuchsii Wickham,1911

Type data:Oligocene Chadronian (Miocene in Wickham,1911), Florissant Formation of Colorado.

http://www.fossilworks.org/cgi-bin/bridge.pl?a=taxonInfo&taxon_no=285781

 産地はアメリカ合衆国コロラド州Florissant Formation。約3500万年前の新生代第三紀漸新世シャドロニアンの地層から出土した甲虫化石を基に記載された(原記載では中新世となっているが、おそらく現在までに採掘された地層の年代測定の研究が更新されたと考えられる)。

 Wickhamによる記載。時期タイプ標本の画像を所蔵博物館がネット上にUPしていたのだが今は消されている。スケッチ等を図示する文献もなく、私自身で描写するのも面倒なので姿見についてはご想像にお任せ。

 16.5mmの甲虫。うっすら見える触覚はクワガタでは無い事を示してやいないか?という疑念がある。クワガタと分かる触角や爪間板の見える化石でも無い。クワガタらしくは無い。

 以上の事から、コクヌスト科(Trogossitidae)かゴミムシダマシ科(Tenebrionidae)、またはエンマムシモドキ科 (Synteliidae)という印象がある。

【Reference】

H. F. Wickham. 1911. Fossil Coleoptera from Florissant, with descriptions of several new species. Bulletin of the American Museum of Natural History 30:53-69

【追記】

 本分類群のタイプ標本画像を見た時「なんだ。やっぱりそういう化石か」と思った。なお観たい場合はホロタイプを観に行かなくてはならない。残念ながら当然だが、観ない人は虫の究極的な奥深さを知る事が出来ない。

f:id:iVene:20211114025758j:image

 「画像も貼らずに記事化とな?」と思われたとしても、わざわざ博物館が引っ込めた画像を単なるブログの為に引用するのは気が引ける。

 稀に「ホロタイプを見に行かなくちゃ分類出来ないなんて言う奴は病気!」と言う一般人が居るが、それこそマトモな思考が出来ていない。しかし、そういう論に便乗する「学者」が居ると、私の眉間に皺が寄る事になる。既知種のホロタイプと比較されていない標本を新種記載の比較に使用する人が大変多くいるのだが、そうして既知種を取り違え結局新学名もシノニムになるなんて間抜けな事もしばしばあるからである。やり方を間違えるなと言いたいが、本人らから話を聞けば彼らは自覚があって、しかも方法を守らず、敢えて破ろうというスローガンがあるんだそうな(なんじゃそれ)。まぁ破戒僧みたいな者だ。だから論文を読む際は、そういう論文がありうるという前提を懸念しておかねばならない。

f:id:iVene:20211114030847j:image

 記載者にしても読者にしても、希少標本や昆虫化石と知るや「珍しいものを知った」気分に巻かれて、その生物学的分類に詳細な疑問をする人は少ない。だが、ひとたび疑問を持つと「アレアレ?なんだこの論文は。無駄に長い論文で読者の気分に煙を巻き、推測を断定にすり替えている。」という結論に達するものが多くある事に気づく。記載者側に胡座をかく癖が付くと、よく知らない一般人さえからも疑問視されるような論文が世に出てくる。

f:id:iVene:20211121140821j:image

 正直、私は必要になった時にしか論文は読まない。ツールの説明書を読む程度の用途でしか使っていない。よろしくない論文を頻繁に読んで"参考になる"とか"分かりやすい"とか評論をSNSで放言している人は一体「何」に役立てているのだろうか(棒読)。

【Key words】Lucanidae, Lucanid beetle, Lucanids, Lucanoid Coleoptera, Stag beetle, fossil, extinct species, article, description, クワガタ, クワガタムシ科, 甲虫, 昆虫, 化石,