クワガタムシ科(Lucanidae)についての調査記録など

目的はverificationismに基づく原典検証・情報整理・批評説明。なお非営利・完全匿名を前提としています。

†Lucanus fossilis Wickham,1913についての検証

Lucanus fossilis Wickham,1913

Type data: Oligocene, Florissant, U.S.A.

http://www.fossilworks.org/cgi-bin/bridge.pl?a=taxonInfo&taxon_no=284021

 産地はアメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス郡のFlorissant Formation。約3500万年前の新生代第三紀漸新世の地層から出土した甲虫化石を基に記載された。

 検証説明のため画像を引用する。

f:id:iVene:20211002000239j:image

(「H. F. Wickham. 1913. Fossil Coleoptera from Florissant in the United States National Museum. Proceedings of the United States National Museum 45(1982):283-303」より引用した図)

 タイプ標本は長さ18.5mmの翅一枚の化石。過去に所蔵する博物館が画像をネット上にUPしていたのだが、今は見れなくなっているようだ。

 画像を見た印象では、原記載で記述されているように北米のカプレオルスミヤマクワガタLucanus dama= Lucanus capreolus)の質感に似た雰囲気はある。しかし原記載ではクワガタムシ科では無く「大型のコガネムシ科(Scarabæid)かもしれない」という可能性にも触れられている。よくよく考えればコフキコガネの仲間(Melolonthinae)やノコギリカミキリの仲間(Genus Prionus)で質感のよく似ている翅を持つものがいる。

 結論として約3500万年も昔の古い昆虫である事を踏まえると、残念だが新たに似た化石が完全の状態で追加発見されるまで、どのような虫だったのか翅一枚からは想像すら出来ない。

【Reference】

H. F. Wickham. 1913. Fossil Coleoptera from Florissant in the United States National Museum. Proceedings of the United States National Museum 45(1982):283-303

【追記】

 具体的な言及はしないが、一方で科学技術の発展した筈の2021年現在でも、翅一枚で新種記載等の決めつけの分類を堂々行う夜郎自大な学者・研究者が少なからずいる。しかも彼らは他の研究者を夜郎自大だと言わんばかりの態度をする。石炭紀の昆虫化石も頻繁に翅や翅脈の形のような僅かな差異だけで属・種分類されるが、其れは遺伝子協同性(gene cooperativity)とトランスポゾン(transposon)の機能が起因する種内変異である可能性が大いにある("wing vein, gene cooperativity"などでgoogle検索すればショウジョウバエのOregon-R や Canton-Sの標準野生型系統のみの知見から沢山の論文が出てくる)。同分類群内での個体変異でも、たった数塩基の違いならば大抵の遺伝子変異で生じていて影響が無い場合の方が多いが、たった数塩基違うために劇的に外見が変わる例は知見としてある(しかし其れを化石種で完璧に説明する事は不可能であるし、種差の論に迄は到達しない根拠でしかない)。模様だけで分類するのにも、同様の疑念が現生種の変異の例をよく知っていれば違和感として有る。翅脈形状や模様は、僅かな遺伝的要因で劇的に変化しうる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%82%BE%E3%83%B3

 そもそも雌雄差か否かも分からない。翅1枚での記載は、賢い人からすれば過剰解釈の結果が知見として論文となっていると簡単に見抜ける。このような論文を書く意義を何とか汲みとろうと頑張ってみると幾つか挙げられる。①其の産地では見られなかった形態の虫と同定したため、②記録のため、③研究費を確保・研究職の立場繋ぎのため、であろうか。①については、如何なる状態変化が起きているか分からず、分類に必要十分な形態が残存していない化石を予断で分類すべきではなく、新たに完全体化石を見つけるまでは新分類群記載ではない型のレポートに留めておくべき、②については、なんらかの既知種の変異がたまたまその産地で絶滅した可能性を無視しているのは良くない、③については、STAP事件を思い出しますねと、それぞれ言及したい。

 こういう記載論文を有りがたがる人は化石種だけでなく現生の生物分類や応用生物学方面でも悪徳宗教的杜撰な研究を論文発表する傾向が高い。色々言ってても結局は矛盾だらけの思想だったり言行不一致じゃないかという姿勢を見せつけてくれる。反科学か宗教狂いの類である。論文で税金から予算が降りている記載を見ると、こんなのに研究費出るんだ!という感想が真っ先に出てくる。そこそこのジャーナルでも専門的な査読が居ないと粗雑な論文は通りうる。だから誰でも簡単に真似が可能な論文でまあまあ高給取りの学者をやっているのかと。学者・アマチュア関係なく問題なのだが、ヘモゲニーを握る為だけを目的とした活動を辞めるべきと考える。其れ等は何の役にも立たないし教育に悪い、そして「学者・研究者」の印象を落とし、間違った信頼を集める。特に学者らは研究不正をしていないか肝に銘じるべきである。

https://m.srad.jp/story/18/09/05/0956253

https://twitter.com/papilio_memnon/status/817736866866696193?s=21

 私はアマチュアだが、筆頭著者として学会誌への5論文ほか同好会誌への論文や、匿名の記事を含めれば20本程度の記事を「出版物」として世に出している。また質の高い論文をジャーナルのレベルに拘わらず多数世に出している人物との意見交換で、出版誌によって内包される無根拠なイデオロギーが其々異なる事がよく話題に出る。頻繁に「査読であれだけ高圧的に言ってきた事が、同じ号の別著者の論文では守られていないじゃないか。所詮は御仲間有利という訳だ。」と。たしかに肩書きや派閥従属はあった方が良いのかもしれないが、大自然はそんなに寛容では無い。軽薄な内容で論文の数を稼ぐ人が多い世の中、其れらを踏まえれば一番吟味されるべきは論文にして世に出す事ではなく「内容」であるという結論に行き着く事は自明である。

 「生物種学名」というのは一つのコードとしての単位であり、社会概念を不安定化させる為にあるものでは無く、安定化を図って説明される。

 僅かな部位の化石で新種記載されて以後100年以上その分類の議論が終わらないスピノサウルス等の例は学問ではなく、学問を嘲笑する象徴となりつつある。そういった例を教訓にすべきであり、その戒めを知ると言うならば口先だけでなく身を切って実行してほしい。疑問するだけでは真実を体現しない。

https://getawaytrike.hatenablog.com/entry/36950355

f:id:iVene:20211105231754j:image(昔よろこんで入手したスピノサウルス類の牙の化石。今は歯だけで同定して良いものかと訝しむ。)

【Key words】Lucanidae, Lucanid beetle, Lucanids, Lucanoid Coleoptera, Stag beetle, fossil, extinct species, article, description, クワガタ, クワガタムシ科, 甲虫, 昆虫, 化石,