†Prosinodendron krelli Bai,Ren et Yang,2012についての検証

Prosinodendron krelli Bai,Ren et Yang,2012

Type data: Lower Cretaceous Aptian, Huangbanjigou, Chaomidian Village, Liaoning Province, Yixian Formation of China.

http://www.fossilworks.org/cgi-bin/bridge.pl?a=taxonInfo&taxon_no=212727

　産地は中国北東部のYixian Formation。約1億2000万年前の中生代白亜紀アプチアンの地層から出土した甲虫化石を基に記載された。

　検証説明のため画像を引用する。

（「M. Bai, D. Ren, and X. K. Yang. 2012. Prosinodendron krelli from the Yixian Formation, China: A missing link among Lucanidae, Diphyllostomatidae and Passalidae (Coleoptera: Scarabaeoidea). Cretaceous Research 34:334-339」より引用した図）

　クワガタムシ科（Lucanidae）とホソマグソクワガタ科（Diphyllostomatidae）やクロツヤムシ科（Passalidae）のミッシングリンクとなる種という話だが、スケッチにある顎のデフォルメがやたら凄い。トレースが大幅に合わないスケッチというのはいただけない。クワガタにしては触覚は矮小過ぎるしフセツもよく見えない。触角のラメラは節ごとの独立構造が見えにくい。クワガタムシらしく無い。

　頭部先端の破損状況が甚大であるにも関わらず、破折痕跡かもしれない線をスケッチでは大顎として描かれている。触角は矮小だが脚部頸節外縁はコガネムシ上科（Scarabaeoidea）の類に多い形態である。

　ここまで触角が矮小な種はコガネムシ上科の中でも少ないのだが、コフキコガネ亜科（Melolonthinae）だと似たような種がいる。

【Reference】

M. Bai, D. Ren, and X. K. Yang. 2012. Prosinodendron krelli from the Yixian Formation, China: A missing link among Lucanidae, Diphyllostomatidae and Passalidae (Coleoptera: Scarabaeoidea). Cretaceous Research 34:334-339

【追記】

　記事を読むにつれ薄々勘づかれた方もおられると推察するが、こういう化石種はタイプ標本1頭だけで記載される分類群が多い。現生種なら変異が幾らでも検証されるべきなので御法度の記載。何故なら化石種の場合は近似別個体があったとして「どうやって同種って分かったの？どうやって別種と分かったの？」という疑問に対する答えを見つける術が無いからである（外形だけで絶滅種の形態変異が何故分かるのか。絶滅種の生存当時に生物学的隔離はどんな条件がハッキリあったと言えるのか。隔離条件の変異と特徴を見てもいないのに何故分かるのか）。また殆どの場合に別種と考える理由も見つからない。同産地から複数の昆虫種化石が記載されていても、大体は1科につき1属1種の按配で、同産地（同時代）の科レベルの差異が参照される化石でなければ、差異が別種を示すのか、雌雄差を示すのか、個体差を示すのか分からない。なので弱い推定に留まる。

　ただ、1科に1属1種ならば記録の意味で種記載をする意義があるし、数千km以上離れた別産地（数百〜数千万年離れる別時代）の個体なら同じ科でも別種である可能性が有意に考えられる。大体の先人達は、この最低限の研究倫理観に従っている（どう検証すれば同産地の同科内で別種と分類可能となるかについては別記事で示唆）。しかしそれならば科の分類は正確であっていなければなるまい。

【Key words】Lucanidae, Lucanid beetle, Lucanids, Lucanoid Coleoptera, Stag beetle, fossil, extinct species, article, description, クワガタ, クワガタムシ科, 甲虫, 昆虫, 化石,