Kaliningradの博物館にあるクワガタ(?)入りバルト琥珀についての検証
一冊の本に何やら「11mmのLucanidae」が入ったバルト琥珀が載っているかのような紹介を見つけ取り寄せた。
そう言えば過去に以下URLにて、「KaliningradのMuseum of World OceanにLucanidae (?Succiniplatycerus) がある」という情報が寄せられている。
この情報を見つけた当時、ネット上では画像も無かったので、「いつか観に行かないと実態不明だな〜。」と億劫な気持ちで悶々と文献の掘り出し物を探していたところ本を見つけ、画像を入手出来ると分かって僥倖な気分であった。
上記URLでのカリーニングラードの博物館所蔵らしい琥珀はKrylovs collectionとされ、文献の方でもcoll. KRYLOVとある。"Krylovs"の方はおそらく"Krylov's"の事かな?おそらく同一個体と考えられる。
検証説明のため画像を引用する。
(「Jens-Wilhelm Janzen 2002. Arthropods in Baltic Amber. Ampyx-Verlag.」より引用した図)
問題の標本写真だが、コレはだいぶ気泡に巻かれていて判別が難しい。また図示写真は満足行くほど鮮明でもないし細部が見えない。クワガタムシ科と同定したなら、その特徴的形態をまざまざと見せつけて欲しかった。金属光沢(?)を思わせる状態は素晴らしいが、パッと見ではコクヌスト科(Trogossitidae)かゴミムシダマシ科(Tenebrionidae)にも見える。触角や頭部、また脚部の写りがわるい。触角は微妙に細長い第一節らしき形態が見えるのでクワガタらしい気もしなくもないが不鮮明で難しい。また片状節が見切れている画像で残念である。脚も琥珀内にあるため歪んで見えるが、短か過ぎでは無さそう。
クワガタムシ科の可能性もありうるが、この画像からは同定が難しく判然としない。やはり実物を見た方が正確な事が分かりそうである。
【Reference】
Jens-Wilhelm Janzen 2002. Arthropods in Baltic Amber. Ampyx-Verlag.
【追記】
論文でもない図鑑とはいえ、もう少し色々な角度から詳細な画像を複数載せてくれても良かったのではなかろうか。「本にそう書いてあるのだから、斜めに構えて読まない方が良い」という次元の話では無い。当ブログの他化石種学名の検証を見ても分かるように、一般的には誤同定が溢れに溢れている。そのため読者に誤解させない表現が必要不可欠な筈で、説得力が殆ど全く無い情報は、利用価値もやはり殆ど全く無いという問題点なのである。
Lucanidae科というのなら、読者にもついてこれるようにして欲しかった。そこそこな値段の本だったが、これでは利用価値が薄く勿体ない。
こういうバイアス頼りなレベルの論文に出くわすと、もはや脱力感が凄い。
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