クワガタムシ科(Lucanidae)についての調査記録など

目的はverificationismに基づく原典検証・情報整理・批評説明。なお非営利・完全匿名を前提としています。

【論考】騙し討ち・はめごろしのある界隈で

 私とも深い議論をやり取りした事がある国外の学者氏が、別国家である中国の甲虫についてたった1頭の奇形の可能性が高い個体を使い非科学的新種記載をして、其れが原因で原産地の愛好家達とトラブルになっていたという情報が入ってきた。現地人達の言い分は「奇形個体に種学名を付けるなんて迷惑だ」である。しかし学者氏の方はまともに取り合わなかったという話である。学術界は論文さえ出していれば、また学術界内での不義理さえなければ、そういう空気で生きていけるからである。遠く離れた国の現地人がどうなろうがアマチュアが分類で困ろうが其の学者氏の人生の妨げになる事は無い。

 昔、その学者氏は私の主張をメールのやり取りでよく理解されていたので、ホロタイプ1頭での記載をはじめ変な論文がパラパラと出てきたのを見た時は違和感が凄かった。だが、やり取りをしている感じでは、他人の意見に振り回されやすい人柄だという事も薄々勘づいていた。

 しかし、どうもこの学者氏がトラブっている状況には違和感がある。なぜ、それまでそこそこ思慮のある論文を書いていた人物が、いきなりそんな非科学的な論文を公表してしまったのか。またなぜ、そんな裏情報が巷で出回っているのか(どちらかというと中国側から流れてきた情報の模様)。

 ここ数年、きな臭い動きを感じる事が多々ある。全くと言って良いほど公益性を伴う実績も無く大して有名でも無さそうなのに結構偉そうな事を言っている人達がSNS界に沢山いる(しかも誇大表現が多い)。まるで"奈良の某センター"が今際の際にやっていた躁病のような態度を彷彿とさせる。昔はそんな人達は少なかったので、私の知る人々も一部の人達に違和感を持ちながら見ているそうだが、誰が何を考えているのかは詳しく分かっていない。誰しもSNSで出鱈目な事を言っている様子から、下手につつくと暴れられる懸念が予想されるため繊細な問題であるとの議論になっている。

 私は一つの仮説を立ててみた。こういう詐欺師予備軍みたいなのが、件の学者氏を甘言か何かで誑かすかそそのかし、件のような体裁の論文を書くよう煽てたのではないかと。また、それを原産地の人達にアレやコレやとある事無い事悪評を付加した上でチクったのではないかと。それだと其の学者氏らの間で急激にトラブルが起き、それまで保たれてきた学者としてのオーソリティは毀損され「あ〜あ、あの学者も大した事なかったね」と、どんな素人からも売名・詐欺目的のマウントを取られてしまうようになる訳である。そうして原産地の人々の感情も悪化し規制が捗る。その方法で安価で入手出来ていた虫を暴騰させようとしているのではないか。

 最近は規制された事を理由に虫を値上げする人も少なくない。

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(件の学者氏を思い出すクワガタムシ。あの頃は頑張っていたね。)

【追記】

 こういう騙し討ちなんかの可能性も幾らでもありうる時代なので資料検証方法を極力厳しくしていた方が無難であると言えるし、Twitterみたいな見づらい場所を選んでSNS活動をしている研究者モドキ(肩書きがあっても本質的に偽物もいる)を見つけてしまうと非常に怪しさを感じる訳である。

 だからこの業界でやってくのが大変というのもある。私が色々聞いてきた経験則でも、例えば博物館の学芸員になれた人の中には運が良くてやれているという人もいた。準備不足なのに目標を狙って生き抜くのはなかなか難しいのが社会の前提としてあるからである。

 こんな記事でも残しておく意義はある。サイエンスの奥深さは常にモヤモヤを看破している。

(ダーウィンの進化論は)法則としては壮大なものであるけれど、事実を前にしては空気しか入っていないガラス瓶のようななものだ。

(ジャン・アンリ・ファーブル)