クワガタムシ科(Lucanidae)についての調査記録など

目的はverificationismに基づく原典検証・情報整理・批評説明。なお非営利・完全匿名を前提としています。

†Dorcus (Eurytrachelus) primigenius Deichmüller,1881についての検証

Dorcus (Eurytrachelus) primigenius Deichmüller,1881

Type data: Eocene, Kučlín near Bílina, Czech Republic.

http://www.fossilworks.org/cgi-bin/bridge.pl?a=taxonInfo&taxon_no=256743

 産地はチェコのビリーナ近郊クチュリーン。約3500万年前の新生代古代三紀の地層から出土した化石を基に記載された。

 検証説明のため画像を引用する。

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(「J. V. Deichmüller. 1881. Fossile Insecten aus dem Diatomeenschiefer von Kutschlin bei Bilin, Böhmen. Nova Acta Academiae Caesareae Leopoldino-Carolinae Germanicae Naturae Curiosorum 42:293-330」より引用した図)

 破損大の頭部しか無い化石。大顎を除いた長さが8mm、大顎は12mm。雰囲気だけなら例えばクワガタのDorcus rectusらしいようにも見えるけど触角の欠損した頭部のみならば違う科にも分類可能な標本。

 以下のページでは、原記載を読まずにヨーロッパにいたDorcusなのだからDorcus parallelipipedusに似ていたんだろうという推論が書かれている。

http://paralleli.life.coocan.jp/essay/022/index.html

 よく考えてみて欲しい。3500万年前はとてつもなく昔であり、約2000万年間に亘り続いた暁新世-始新世温暖化極大という温暖化現象がようやく収まった頃合いである。現在迄に過酷な氷河期を挟み当時のヨーロッパにどんな生物種が居たのかなんて現生種からは予想もつかない。生物進化の再現実験など出来ない。環境が変われば住める場所に移動しつつ進化淘汰を繰り返して形態変化もしていくとされているのが動物である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%81%E6%96%B0%E4%B8%96-%E5%A7%8B%E6%96%B0%E4%B8%96%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E6%A5%B5%E5%A4%A7

 触角第一節と頭部しか残っていないこの型の化石だとゴミムシダマシ科(Tenebrionidae)などかもしれない。今は居ない生物種の一部だと、なかなかまともに分類が出来ない。

【Reference】

J. V. Deichmüller. 1881. Fossile Insecten aus dem Diatomeenschiefer von Kutschlin bei Bilin, Böhmen. Nova Acta Academiae Caesareae Leopoldino-Carolinae Germanicae Naturae Curiosorum 42:293-330

【追記】

 たまに学者をやっている人のコミュニケーションを側から見ると、出典不明な状態で推定を断定にした論調をする人が多い。「科学者」の筈なのに議論中で出典を全く示さずに意見を主張するのは如何なものか。詳細な論理の部分への議論へ進めず、人格攻撃を始める人間が居たのを見た時は驚異した。いったいどんな教育を受けたらそうなるんだ。生物種分類ならホロタイプの観察、沢山の標本の形態変異や特徴と其のデータから導き出される相関現象考察、交尾器形態などの生物学的隔離や地理的隔離の付記、遺伝子情報からの変異推定や遺伝子機能からの種内変異出現の既知知見論理、生物種学名を維持するために規約がある事や原綴りを確認したり、命名規約には両論解釈が無いという解釈が必要と理解したり、シノニムのようでシノニムにならない普遍化した種学名についてなど、様々な事を参照せねばならないのに出典が示されてなく、意味の無い議論へと突き進む職業研究者が目立つ(近年2020年あたりのSNSインフルエンサーしている人物などは先ず其れが先鋭化している)。

 確かに出典を示さないならば即席での対応が出来て、詐欺師がよくやる手口で恰も知識人のような振る舞いを見せつけられる(「なりすまし詐欺」との差があんまり無い。詐欺の1種か)。しかし我々の生活基盤に関わる古典的な知識というのは、物的資料の貴重品を保護するという名目以外では、わざわざ個々人で金銭取引をしてまで得るものであってはならず、誰もが学者の意見に疑問を向ける事が出来る(少なくとも日本は)。一般人には出典を示さないレベルのリテラシーが危険であると理解している人が沢山いるので、職業研究者の信用とは何なのかとボンヤリ哲学的に考えてしまう。

 大抵の言葉遣いが粗い「学者」は、実地的実直的な研究をしていない。そのため研究方法も粗雑且つ結果も胡散臭い。何もかもが粗く自己中心的で、公共性には頑なに浸透せずマトモな科学者達に擬態するのを徹底している。彼らの科学への興味は其れらの実績から見るに真実味が希薄である場合が多く、知識人からは落胆されやすい。「独りよがりな論文」なんぞはエゴイズムの塊であり、書かない方がマシである。彼らの中には「ハッタリで科学を盛り上げている」と存在理由をゴネすらする人間がいるが、実地研究をする人からすれば、つまらないだけの傍迷惑な邪魔者達でしかない。

 例えば以下のツイートでは、とある展示会での解説を読めるが、虫入り琥珀石炭紀からも見つかっているかのような表現である。 石炭紀から完新世の間で、虫入り琥珀が見つかっているのは白亜紀から完新世の間という知識が一般的な筈だが、妙な解説である。

https://twitter.com/lunaasron/status/1436631842858274818?s=21

 最古の虫入り琥珀は約1億2500万年前のレバノンから、また最古の生物痕跡が入るのはイタリアからの約2億3000万年前のダニで、石炭紀から虫入り琥珀が出ればニュースになる。しかし石炭紀琥珀は見つかっていても、2021年現在まで石炭紀の虫入り琥珀というのは他に聞いた事も無いのだが、こういう展示を博物館関係がやって良いものか疑問である(私は全く興味が持てず足を運ばなかった為知らなかったが、展示は最早数年目と考えると肝が冷える)。

【Key words】Lucanidae, Lucanid beetle, Lucanids, Lucanoid Coleoptera, Stag beetle, fossil, extinct species, article, description, クワガタ, クワガタムシ科, 甲虫, 昆虫, 化石,