【俗談】虫死骸の脱脂をアセトンで行う時はガラスか金属容器内でしよう
やる人が少ないだろうから稀にしか気づかれないだろうが、ある程度整形済の「標本」を再整形したくなったとき、いつものやり方で軟化が出来ない事がある。そういう個体は、例えば80℃くらいの湯に入れても殆ど関節が柔らかくならない。これは困ったという人が過去に何人かいたろう事を私の実体験から予想されたので書いたのが今回の記事。
種明かしをすれば、其の個体はアセトン処理がなされている。しかもプラスチック容器に入れたアセトンに虫死骸を入れて処理されている。
知っている人も多いからネット上でも調べてみると注意している人がいるにはいる。しかし、そんな事を説明されない場合の方が多いから記事にした由。
プラスチック容器内で虫死骸のアセトン処理をするとどうなるか。答えは簡単、容器内面のプラスチックが溶けて虫の関節に侵入し、死骸を乾かすと関節がカチカチの個体が出来上がっているという訳。しかも目に見えないから知っていなければ原因が分からない。
一度は整形された筈の個体が、なんで再形成出来ないのかというトリックは其れが答えである。
なんだ聞いてないぞ!という人はごもっとも。そんな事とはつゆ知らず虫をバッチリとプラスチックコーティングしている標本商が少なからずいるから是非も無い。
こういう個体に出会したとき、取れる対策としては、ガラスか金属の容器ならばアセトンに溶けないのでそういう類の容器内で再度新しいアセトン処理を行い、虫の関節に入ったプラスチックを溶かし薄めるという方法が良い。そうすると漸く虫個体の再形成が可能になるという算段である。
(艶めかしいコンツムマルバネクワガタ。アセトンで脱脂するまではこの黄紋が暗色だった。未記載種の可能性が高くとも、かなりの希少種で個体数が集まらない。)
【追記】
最初から気をつけていれば、こんな手間にコストを取られなくて済むので対策しておいて損は無い。
ーなぜ昆虫学を続けるのか?
他のものを選ぶ暇がない。
(ジャン・アンリ・ファーブル)