クワガタムシ科(Lucanidae)についての調査記録など

目的はverificationismに基づく原典検証・情報整理・批評説明。なお非営利・完全匿名を前提としています。

【第陸欠片】約1億年前・後期白亜紀セノマニアン前期のクワガタムシ科入りBurmese amberについて

 以下は私が剛毅果断の気概を賭けて入手に成功した6個体目のクワガタムシ科入り琥珀右触角画像※1枚目:背面・2枚目:腹面(全身は現状秘密)。※琥珀の真偽判定は、簡単に可能な方法(食塩水テスト、UVテストなど)では確認済。

f:id:iVene:20220217125043j:image(体長約12mmのクワガタ。本体は樹脂の脱水収縮で潰れている。腹面は気泡が巻かれて腹節板が見えないが、触角は10節構成で第一節が細長く第二節との関節で膝状に曲がる形態・片状節形態から間違いなくクワガタムシと分かる。型としては1点モノで他に見た事の無い外形のクワガタ)

f:id:iVene:20211031143945j:image(触角の細部形態はニセキンイロクワガタHomolamprima crenulata MacLeay, 1885に似て、第八節から第十節にかけて肥大率が下がりキンイロクワガタ亜科的。大顎の雰囲気もドウイロクワガタに似ている)


f:id:iVene:20220218224836j:image

f:id:iVene:20220218224853j:image

(ちなみに左触角は引っ込んでいて片状節形態が分かる程度。なお腹面からは樹脂の亀裂が遮り鮮明には見えない)

https://artsandculture.google.com/asset/homolamprima-crenulata-geoff-thompson-queensland-museum/xwGQv0A2bZ9cWQ

f:id:iVene:20220125235611j:image

(南米チリのドウイロクワガタ:Streptocerus speciosus Fairmaire, 1850も豪州のニセキンイロクワガタに似るが触角第七節の肥大が異なる。琥珀のクワガタはサイズ的にかなり離れ大顎もここまで大振りでは無いが最初に連想した種はこれだった)

 産地はミャンマー・カチン州タナイ。琥珀のクワガタは絶滅既知種との種内雌雄差か種内個体差か別種かの関係性判断は不可能である。ただし現生種とはいずれとも異なる。

 同琥珀は大きく、白亜紀の双翅類(Diptera)?など沢山の虫群が同封される。蜂らしいのも見える。専門外は疎いので一応「?」を付ける。

 触角は10節構成で第一節が細長く伸び第二節との関節が膝状に曲がっている形態および片状節形態クワガタムシ科以外の別科には該当しない。ただ、これだけを観るとクワガタムシ亜科のそのものが系統化していたかのように見えるから勘違いする人もいそうだが、此の形態は単に普遍的クワガタムシ亜科の触角形態に偶然一致をしているだけでキンイロクワガタ亜科であるかもしれないから詳しい系統関係までは特定出来ない。ニュージーランドに分布するマダラクワガタ亜科の一部の種も微妙に似た感じの触角になっている。

 キンイロクワガタ亜科にはクワガタムシ亜科的な形態の触角をする種と、マダラクワガタ亜科的な形態の触角をする種がいる。蛹の形態や交尾器形態で別亜科にされているみたいだが、交尾器形態はどちらかというとマダラクワガタ亜科的である。今回の琥珀に入るクワガタの触角は、クワガタムシ亜科的でもあるしキンイロクワガタ亜科的でもあり、其れ等が分岐する以前の様々な触角形態を発生させる種系統の個体であった可能性もあり、ミャンマー琥珀から知られる琥珀種がそういう種内変異を持つ特殊な系統であったかもしれない可能性はそもそも交尾器形態の変異と特徴を定量出来ないから否定出来ない。もしかすると全く別の絶滅系統が収斂で似た感じになった可能性も考えられる。

 またクワガタムシ科はジュラ紀に出現し白亜紀にベースとなる分化をしたという現在の定説自体も実際にはやや信じがたい。というのも、白亜紀後期セノマニアン前期には体長10mmを越しクワガタムシ亜科の型になるような形態を獲得しているのは想像以上に早い段階で分化を始めていたという事を示唆するからである。最小で3.5mm程度のクワガタムシ科始祖が生じたと仮定するとその3〜4倍のサイズに大型化するのはかなりの時間がかかっていそうである。実際は更に古いのではないか。しかし白亜紀セノマニアンより古い確実なクワガタムシの化石は見つかっていない。

 そしてジュラ紀に出現したクワガタという根拠の既知化石種は論文を読んでみたり化石の画像を見る限りではクワガタムシ科の定義に当てはまるほど特徴が残っていない虫の化石で考察がなされているし記載文は曖昧な長い文章で読者の関心に煙を巻いてある。その殆どは北半球の虫の化石であり、別科甲虫の雰囲気がある化石ばかりで、クワガタとは確定出来ないように見える状態の悪い化石という問題も解決が無いまま種までの分類がなされている。北半球の化石を調べるのは良いが、質の悪い化石で分類をしていくべきではなく、南半球にあったであろう産地をメインに化石種を調べた方が良さそうな予感がする。少なくとも現状の南半球での化石調査は、あまり大規模とは見えにくい。

f:id:iVene:20211105093524j:image

【References】

Fairmaire, L. 1850. Description d'un nouveau genre de Lucanide. Annales de la Société Entomologique de France (2) 8:53-57.

MacLeay, W.J. 1885. Two new Australian Lucanidae. Proceedings of the Linnean Society of New South Wales 10(2):199-202.

G. V. Nikolajev, B. Wang, Y. Liu and H. C. Zhang. 2011. Stag beetles from the Mesozoic of Inner Mongolia, China (Scarabaeoidea: Lucanidae). ActaPalaeontologica Sinica 50:41-47

G. V. Nikolajev. 2000. New subfamily of the stag beetles (Coleoptera: Scarabaeoidea: Lucanidae) from the Mesozoic of Mongolia, and its position in the system of the superfamily. Paleontological Journal 34(Suppl 3):S327-S330

G. V. Nikolajev. 2007. Mezozoyskiy Etap Evolyutsii Plastinchatousykh (Insecta: Coleoptera: Scarabaeoidea) 1-222

【追記】

 推定約1億年前の白亜紀セノマニアンのクワガタムシ白亜紀の10mm越えをしていて触角や大顎も発達したクワガタムシとしては私が初めて見た個体。

 出品者に自信があったようで其れまでに無い高額に気圧されそうになったが「背に腹はかえられぬ」と考え入手したものであった。とはいえ実は此れでも博打であった。出品時画像ではクワガタ個体が琥珀樹脂の深い部分にあった事と樹脂の流れた痕跡が縞状に入り内部の光屈折率を変えて見えづらかったので触角がブレて見えていた。だが普遍的クワガタらしい雰囲気の触角が見え、別科だったとしても興味深いと考え決断に至った訳である。

 手元に届いてから虫を見やすくする為に切削・研磨を行ったのだがミャンマー琥珀はなかなかに堅かった。琥珀が大きめだったので削る量が多く、また沢山の虫が同封されていたから最小限の切削にする。また貴重な琥珀だから絶対に壊してはならない。割れないように最終的な琥珀形態を予め設計する。綿密に計画を練って切削・研磨を行った。

 しかし最初にこの琥珀を見た時はまた驚きだった。白亜紀セノマニアンに大顎や触角がここまで発達していて10mm以上あるクワガタが居たなんて当時は全く知らなかった。そういうのも薄々いるかもしれないとは考えていたが、論文や報文どころか個人的知見も全く無いの状態で此のレベルの琥珀が出品されたのも意外で不意打ちであった。見る迄は白亜紀からはマグソクワガタ系などの原始的クワガタしか知らなかった為「インド亜大陸にまつわるプレートテクトニクス理論に間違いがあるのかもしれない」とも考えていたが、そうとも言い切れないと理解した。

 このように発見というのはいつも即物的なものだからNature誌やScience誌などのインパクトファクターの高い科学誌では画像図示などで済む話を長々と文章記述しないようにと言われている訳でもあるが、生物種分類学論文、特に昆虫類では読者の期待から外れ理解から遠くに行く論文が多い。

 さて、当ブログでの活動から分かる通り私は既に以前話した「ステルス式収集」を辞めている。私個人で調べたかった資料としては充分な収集が成っているからである。判別法等も記したが、これから如何なる世の中になるのかは時代の流れに任せてみたい。

VSCoincidence:偶然の一致」

 世の中には恰も最もらしい因果関係があるようで全く異なる因果関係や偶然に起こる現象に溢れている。解釈を間違えると致命的な誤認を促しかねないから、自然科学を扱う業界では因果関係がどのようなものであるか整合性を確認するために注意されている基本的な観念の一つである。

 関係する話では、虫を始めとした生物種の同定が難しいのは自然界での"変異"がどういう意味を含むのか分かりにくいからという理由がある。「変異を知っていても"破損形態"と"生物的形態"を見間違える人」も沢山見てきたが、予備知識の無い基本的な人間の認知能力は其れくらいが限界である。しかして"雰囲気同定"は大損の始まりである。

 そのように我々人間のような知的生物は「偶然の一致」を因果的なものと頻繁に見間違う。心理学においてカール・ユングの提唱した"synchronicity"があるが其方はあまり具体的な話では無く、科学では"coincidence"が問題になる。論理学においては例えば"同音異義語・同綴異義語"は最も分かりやすい「偶然の一致」の例であり、更にその中の例として"同姓同名の別人が此の世に居る"という事が其れの本質的証拠である。だから普通の社会では相手が察しにくい場合を配慮し、意味を説明して会話する事が最も普通の良心的コミュニケーションである。種小名の語源が分かるものと分からないもの(ニックネーム由来かもしれない等)が国際動物命名規約第四版で論理的に触れられているのはつまりそういう配慮を踏まえているという事である。同音異義語・同綴異義語は、一般的には文脈のみからでは意味を読解しきれない場合の方が多いが、天然思考をすると経験不足の直感による慢心的予断を行う事になってしまう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8C%E7%B6%B4%E7%95%B0%E7%BE%A9%E8%AA%9E

 自然現象でも似たような事がある。例えばジェノコピー(遺伝子模倣)やフェノコピー(表現型模倣)。それを知らない人達は簡単に間違った種同定の解釈をしている。現生種生物の外形による見分け方が有効とは限らない事は隠蔽種生物の存在が証拠である。

 昆虫の生態でも、例えばカマキリは大抵の場合に交尾中♂が頭部から♀に捕食されるが、頭部を失って脳による思考的行動が出来なくなったとしても、立脚や交尾継続などある程度の行動は身体側に残る神経だけで出来るように構造上なっている。大抵の大型動物は様々な指令を身体側に下す脳を失うと身体機能を即座に失っていくから、昆虫で首無しの生態的行動を観るとまるで脳が無くても、或いは頭部以外に脳があって生き延びられるかのように錯覚するが実際はそういう訳では無い。

 これ等のように人間には予備知識無しに"偶然に起きた現象"と"因果的な現象"が一致していた場合に見分ける認知能力が無い。特に後天的な脳障害がある訳ではなく全ての人間が持っている人としての認知限界である。だから実際問題として正確性と想像力はトレードオフの関係であるという事を考慮しなければ誤解が必ず生まれる。

 視野狭窄な人達は調べる事について「広く」且つ「深く」知らないから勘違いしやすい。だが広く深くなんて難しいから謙虚にモノを見る事が慎重で良い方法であると先人は学び生きてきた。それ故に「木を見て森を見ず」という諺があるのだが近年のSNS界で其れをマトモに理解している人々は少ない。だから分の悪い賭けに夢を見て神頼みする人達が沢山いる訳でもある。

 私からしても、学者らによって出される「図示不足や一貫性の無い考察で作られた論文」と、詐欺師らが書く「悪徳商売目的の論文」とは見分けがつかず区別が大変困難と感じる事が多い。まぁ結局はどちらにしても読者を舐めたような態度が垣間見える論文だという訳なのだが。

https://twitter.com/terrakei07/status/1486595403877212160?s=21

 こういう誤認を利用する詐欺師が産地擬装など行い景品表示法違反で罰せられたり、研究不正をしてペナルティを受ける学者もいたりする。また"舞台に上がるオーディエンス"をエキストラにやってもらいあたかも奇跡を起こしているように見せかける「自作自演」的なマジックショーもある。純粋な一般人は是等をコロッと錯覚し簡単に騙される。自作自演を始めとした露骨なマッチポンプ某巨大掲示板"2ch"でも頻繁に見られ、私も遭遇した際はよく笑った。

 実在が証明された事の無い「神」という概念も様々な宗教で登場し、人間がたまたま"種としての生存率"を上げるために獲得してきた能力で得ただけの幸運を「神からの贈り物」と勘違いしたりする。科学的思考をすれば「神」なる概念を物理的に恒久的存在証明になる証拠が無いと分かる(居ないとも証明出来ないが)。"精神"というものに対する神秘性に価値を見出す人も多いが結局のところ色々な経験則から得た生存本能的意識の組み合わせ、つまり生物学的に無意識に起こる条件反射的思考を神秘と誤認しているだけに等しい。

 贋作の絵画や文書、また偽論理も人間の思考限界による誤認メカニズムが悪用されてしまい、詐欺的行いが横行蔓延する訳である。歴史認識でも同様の問題があるし政治利用も沢山ある。一瞬で解決しそうな歴史問題とやらが何十年も終わらないのは為政意識の強すぎる人達が誤認を促す事が原因である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E9%81%8B%E5%8B%95

 また、こと"歴史を政治利用する人達"は根源的調査を避けて「差別」という言葉を軽々しく意識から発露させ政治的に扱い陳腐化させる。そもそも差別的認知というのは人間を始め全ての知的生物が持っている本能的生物機能であり犬ですら"飼い主"と"そうでない人間"を差別的に対応する。どの"括り"が自身の生活にとって支障をきたすかは様々な経験学習で決まるから差別的思考をしない知的生物は居ないし差別的思考をしていないと証明出来る人間は居ない。つまり個々でどれだけこの鬱陶しい話題に怒りが溜まろうとも表現上では自身で気をつけるしか無いのだが、此の知的生物の本能的行動の一つであるグルーピングの思考を完全に失くせると勘違いしている人達は多いし、分かっていて悪徳ビジネスに利用する輩も多い。

https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcSCTyi4vnmYkJ9naq4c6uxv3Tm15Xzeoz8YJg&usqp=CAU

 世の中めんどくさがって正解を出さない人や、成果を焦って間違いに気付かない人達は、このように"洞察力"という幻影に惑わされ続ける。人間は予備知識で色々な見通しを立てているだけで洞察能力なんてものは持っておらず、客観的に見れば"其のエスパーじみた洞察的行為"が因果的に起きているかのように誤認されているだけである。似た誤認が「独創性」という単語の使用でも見られる。客観的に見れば独特な製作物も、どこかからのアイデアを真似て少し突飛な組み合わせにしてあるだけである。よくよく考えてみると思考上では単純な事しか出来ず人間とは案外に機械的と思わされる事の方が多い。実質的には如何なる作品にも独創性は無く、非常に独創的に見えたとしても沢山の単純アイデアの複雑且つ過密な組み合わせで構成されているだけで「独創」そのものでは無く、あくまでも「独創的」に作られているのみに留まる。

 また自然科学の世界では"真実はいつも一つ"である。真実とは事実の集合体である。だから「沢山の真実がある」というような嘘くさい解釈をするのは「想像と現実をハッキリ区別して認識出来ない人間を始めとした知的生物の脳内思考だけ」である。全ての人間を含め知的生物は誤認をしたとしても「自身にとって都合の良い解釈」になるように進化上で"思い込みをしやすい生態"の形質を獲得したのが原因である。だからcoincidence検証による消去法的思考が必要になり、不足している考察はウソッパチである例が多い。

 詐欺師が他人を騙す悪事はこのような人間の誤認を利用して行われる。オレオレ詐欺を始めとする振り込め詐欺は全くの典型例である。"詐欺師"は此の誤認メカニズムをフンワリ理解しているため"社会的正義の雰囲気"を模倣し積極的に他人を騙そうとする。悪質カルト宗教が擬似科学を用いてマルチ商法をしているのも正にそういう詐欺である。

 客観的にありとあらゆる森羅万象の物性物理は動物の意識の上にではなく物理法則の上に成り立っているのだから嘘を決して吐かない。立場の高い人が詐欺師ならば追随する人達も意図せず詐欺師になり一般社会は混乱の極みを呈し出す。悪因悪果*そして天網恢恢疎にして漏らさずという訳である。

 ところで日本の仏教的地獄観というのは道徳的によく戒められるべき行いを示している。以下に引用するので興味があるなら読まれたい。

大叫喚地獄

殺生・盗み・邪淫・飲酒に加えて、嘘をついて人をだますなどの「妄言」の罪が加わった者が落とされる大叫喚地獄に付随する小地獄。「他人の田畑を奪い取るために嘘をついた者」などの細かい条件によって十八種類の小地獄が用意されている。ここのみ二種類多いことになるが、本来黒縄地獄に入れるべき物が混ざったのか、理由は明らかでない。 叫喚地獄の10倍の苦しみ。

吼吼処(くくしょ/こうこうしょ)
恩を仇で返した者、自分を信頼してくれる古くからの友人に対して嘘をついた者が落ちる。獄卒が罪人の顎に穴をあけて熱した鉄のはさみで舌を引き出し、毒の泥を塗って焼け爛れたところに毒虫がたかる。

受苦無有数量処(じゅくむうすうりょうしょ)
嘘をでっち上げて、目上の人を陥れた者が落ちる。獄卒に打たれて傷つくと、その傷口に草を植えられる。成長し根を張ったところで引き抜かれる。

受堅苦悩不可忍耐処(じゅけんくのうふかにんたいしょ)
王や貴族の部下で、保身のために嘘をついた者、またはその地位を利用して嘘をついた者が落ちる。叫喚地獄同様に罪人たちの体内の蛇が動き回り、肉や内臓を食い荒らす。

随意圧処(ずいいあつしょ)
他人の田畑を奪い取るために嘘をついた者が落ちる。さながら鍛冶師が刀を作るときのように、罪人を鉄に見立てて火で焼き、ふいごで火力を強め、鉄槌で打たれ、引き延ばされ、瓶の中の湯で固められ、また火で焼く、ということが延々くり返される。

一切闇処(いっさいあんしょ)
婦女を犯して裁判にかけられながら、王の前で嘘をついてしらを切り通し、かえって相手の婦女を犯罪者に仕立て上げた者が落ちる。頭を裂いて舌を引き出し、それを熱鉄の刀で引き裂き、舌が生えてくるとまた同じ事を繰り返す。

人闇煙処(じんあんえんしょ)
実際は十分に財産があるのに財産がないと嘘をつき、本当は手に入れる資格がないものを皆と一緒に分け合って手に入れた者が落ちる。獄卒に細かく身体を裂かれ、生き返るとまだ柔らかいうちにまた裂かれる。また、骨の中に虫が生じて内側から食われる。

如飛虫堕処(にょひちゅうだしょ)
穀物であれ衣であれ、サンガの所有物によって商売を行い、安く買い高く売り、得たものをサンガと共有せず、「儲けがなかった」と嘘をつく者が落ちる。獄卒が罪人を斧で切り裂き、秤で計って、群がる犬達に食わせる。

死活等処(しかつとうしょ)
出家人(僧侶)でもないのにその格好をし、人をだまして強盗を働いた者が落ちる。獄卒に苦しめられる罪人たちの前に青蓮華の林が見え、そこに救いを求めて駆け寄ると、炎の中に飛び込むことになる。また、両目をえぐられ両手足も奪われて抵抗できないまま焼き殺される。

異々転処(いいてんしょ)
優れた陰陽師で正しく占うことができ、世人の信用を得ていながら、占いで嘘をつき、国土や立派な人物を失う原因を作った者が落ちる。目の前に父母、妻子、親友など(の幻)が出現するので、救いを求めて駆け寄ると灼熱の河に落ちて煮られる。再生して河から出ると、再び同様の幻が出現し、駆け寄ると地面の鉄鉤で切り裂かれる。また、上下からの回転ノコギリ(のようなもの)で切り刻まれる。

唐悕望処(とうきぼうしょ)
病気で苦しんだり、生活に困ったりしている人が助けを求めているのに、助けると口先ばかりで嘘をついて、実際には何もしてやらなかった者が落ちる。目の前においしそうな料理が出現するので駆け寄ると、途中に生えた鉄鉤で傷つき、しかもたどり着くと実は料理に見えたのは熱鉄や糞尿の池で、その中に落ちて苦しむ。また、夜露をしのぐ家を貸すといって貸さなかった者は、深さ50由旬の瓶の中で高熱の鉄汁に逆さまに浸されるなど、嘘に応じた罰がある。

双逼悩処(そうひつのうしょ)
村々の会合などで嘘をついた者、悪口を言って集団の和を乱した者が落ちる。炎の牙の獅子がおり、罪人を口の中で何度も噛んで苦しめる。

迭相圧処(てっそうあつしょ)
親兄弟親戚縁者などが争っているときに、自分の身近な者が得するように嘘をついた者が落ちる。罪人に騙されたものたち(本人かどうかは不明)が出現し、罪人の肉をはさみで切り取って口の中で噛んで苦しめる。切り取られた肉片にも感覚がある。

金剛嘴烏処(こんごうしうしょ)
病気で苦しむ人に薬を与えると言っておきながら与えなかった者が落ちる。金剛のくちばしを持つカラスが罪人の肉を喰う。喰い尽くされると罪人は復活し、また始めから喰われる。

火鬘処(かまんしょ)
祝い事の最中に法を犯しておきながら、しらを切った者が落ちる。獄卒が鉄板と鉄板の間に罪人を挟み、くり返しこすって血と肉の泥にしてしまう。

受鋒苦処(じゅほうくしょ)
布施しようと言っておきながら布施をしなかった者、布施の内容にケチをつけた者が落ちる。獄卒に熱鉄の串で舌と口を刺される。嘘をつくことはおろか泣き叫ぶこともできない。

受無辺苦処(じゅむへんくしょ)
船長でありながら海賊と結託し、船に乗っている商人達の財産を奪った者が落ちる。熱鉄の金箸で吼々処のように舌を引き抜かれる。いくら抜いても舌は再生し、そのたびに抜かれる。さらに目を引き抜いたり、刀で肉を削られたりする。

血髄食処(けつずいじきしょ)
王や領主の地位にあって税物を取り立てておきながら、まだ足りないと嘘をついて多くの税を取り上げた者が落ちる。黒縄で縛られて木に逆さづりにされた上、金剛のくちばしのカラスに足を食われる。罪人は流れてきた自分の血を飲むことになる。

十一炎処(じゅういちえんしょ)
王、領主、長者のように人から信頼される立場にありながら、情によって偏った判断を下した者が落ちる。10方向から炎が吹き出して罪人を焼き、罪人の体内から11番目の炎が生じて口から吹き出し舌を焼く。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E5%85%AD%E5%B0%8F%E5%9C%B0%E7%8D%84より引用抜粋

 大抵の人が陥りやすい落とし穴だが、戒めが足りないと人間は必ず偶然の一致を因果的なものと想像で決め付けて勘違いする。対抗意識本意で社会を生きる人達や競争を好き好んでやる人達は殆ど此の落とし穴に嵌っている。